1. 就労移行支援とは

就労移行支援とは

自分や身の回りに、次のようなお悩みはありませんか?

  • 自分にどんな仕事が向いているかわからない
  • 仕事が長く続かず職を転々としている
  • 支援学校を卒業した後の進路を探している
  • 障がいのある子どもの就職を応援したい

このようなお悩みをお持ちの方は、本記事で解説する「就労移行支援」について知っていただきたいです。

就労移行支援の概要

就労移行支援とは、障害や心の病気などで働くことに不安を抱える方々を対象に、就職や職場定着を目指して支援を行う福祉サービスです。

この支援は、障害者総合支援法に基づき、職業スキルの習得や就職活動のサポート、職場への適応トレーニングなどを行います。

就労移行支援を利用するメリット

就労移行支援を利用することで、社会生活に次のようなメリットがあります。

生活リズムが整う

就労移行支援を利用することで、規則正しいスケジュールが組まれるため、生活リズムが整いやすくなります。特に、長い間自宅で過ごしていた方や体調管理が難しい方にとって、毎日の通所が生活の基盤を作るきっかけとなります。

最低限のスキルやマナーが身に付く

職場で必要とされる基本的なスキルやマナーを学べる点も大きなメリットです。例えば、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の基本や名刺交換の仕方、PCスキルなど、仕事をするうえで欠かせない基礎を習得できます。

就職活動のサポートがある

履歴書の書き方や面接対策、求人情報の提供など、就職活動全般をサポートしてもらえます。また、就職後も職場での悩みや課題について相談できるフォローアップ体制があるため、職場定着率が高まる傾向にあります。

就労移行支援のサービス内容

就労移行支援のサービス内容や利用してから就職までの流れを解説します。

サービス内容

就労移行支援事業所では、利用者一人ひとりの状況や目標に合わせたサポートを提供しており、主なサービス内容は次の通りです

  • 職業スキルトレーニング
    • 一般就労に必要なスキルを身につけるトレーニング(PCスキル、コミュニケーションスキル、軽作業など)。
  • 就職活動サポート
    • 履歴書の添削、模擬面接、求人情報の提供など。
  • 職場体験の機会提供
    • 実際の職場で体験を通じて適性を確認し、自信を持つための支援。
  • 生活支援
    • 生活リズムの改善や健康管理のアドバイスを行い、就労を支える生活基盤作りをサポート。
  • 定着支援
    • 就職後のフォローアップを行い、職場での継続的な就労を支援。

就労移行支援の利用から就職までの流れ

先ほど就労移行支援の主なサービスの内容を紹介しましたが、ここではどのような流れで就職に至るのかを解説します。

個別面談

利用開始時には、支援員との個別面談を行います。この面談では、これまでの経歴や現在の状況、将来の目標を話し合い、個別支援計画を作成します。一人ひとりに合った支援内容を設定することで、効率的かつ無理のない支援が可能になります。

就職準備

就労に必要なスキルやマナーを学ぶ段階です。PC操作や名刺交換などのビジネスマナーのほか、コミュニケーションスキルの向上、ストレス管理の方法なども指導されます。また、日常的な生活リズムの調整もこの段階で行われます。

職場体験

希望や適性に基づき、実際の職場での体験が可能です。職場体験を通じて、自分の適性や興味を確認できるだけでなく、実践的な経験を積むことで就職後のイメージを具体化できます。

就職活動

支援員のサポートを受けながら、求人情報の検索、履歴書作成、模擬面接などを行います。就職活動のプロセスを一つひとつ丁寧に進めていくことで、自信を持って応募ができるようになります。また、必要に応じて企業との調整も支援員がサポートします。

定着支援

就職が決まった後も、定着支援を通じて職場での課題や悩みを相談することができます。例えば、職場での人間関係や業務内容への適応についてアドバイスを受けることができます。このサポートにより、職場での継続的な就労が実現しやすくなります。

就労移行支援のスタッフ構成

就労移行支援事業所では、多職種のスタッフが連携して利用者をサポートしています。それぞれの役割が明確に分担されており、利用者の就労や生活の支援を総合的に行う体制が整っています。

就労移行支援の一般的なスタッフ構成

先ほど就労移行支援の主なサービスの内容を紹介しましたが、ここではどのような流れで就職に至るのかを解説します。

管理者

管理者は、事業所全体を統括する責任者です。管理者は、サービスが適切に提供されているかを確認し、スタッフの指導や運営方針の策定を行います。また、行政や外部機関との連携を図る役割も担っています。

サービス管理責任者

サービス管理責任者は、利用者一人ひとりの個別支援計画の作成・管理を担当します。利用者の特性や希望を踏まえた最適な支援計画を立て、計画が円滑に実施されるようスタッフと連携します。また、利用者や家族との面談を通じて、進捗状況を確認し必要な調整を行います。

就労支援員

就労支援員は、利用者の就職活動をサポートする専門スタッフです。求人情報の提供や応募書類の作成指導、面接対策など、就職に向けた具体的なサポートを行います。また、企業との連絡や調整も担当し、利用者がスムーズに就労できるよう支援します。

生活支援員

生活支援員は、利用者の生活面での支援を行うスタッフです。生活リズムの改善や健康管理、日常の悩み相談など、利用者の生活基盤を整えるためのサポートを行います。生活面が安定することで、就労への意欲や準備が整いやすくなります。

職業支援員

職業支援員は、職場で必要なスキルや知識を指導する専門スタッフです。PC操作や軽作業、接客スキルなど、利用者の目標や適性に応じた訓練を提供します。また、職場体験の実施時には同行し、実践的なアドバイスやフィードバックを行うこともあります。

就労移行支援と就労継続支援の違い

就労移行支援と就労継続支援は、どちらも障害のある方が働くための支援を提供する福祉サービスですが、目的や対象、支援内容に違いがあります。以下では、それぞれの特徴と違いを説明します。

就労継続支援とは

就労継続支援は、一般企業での就労が難しい方に、長期的な働く場や支援を提供する福祉サービスです。「A型」と「B型」の2つのタイプがあり、それぞれ利用条件や提供される支援内容が異なります。

就労継続支援A型

就労継続支援A型は、利用者が事業所と雇用契約を結び、賃金を得ながら働く形態です。実際の職場に近い環境で、業務を通じてスキルを磨きつつ、継続的な就労を支援します。また、次のような特徴があります。

  • 雇用契約を結ぶため、労働基準法が適用されます。
  • 賃金は最低賃金以上が保証されます。
  • 仕事の内容は事業所によって異なり、軽作業や製造業務、接客業務など多岐にわたります。
  • 障害特性に応じた配慮があり、無理のない範囲で働けます。

就労継続支援B型

就労継続支援B型は、利用者が雇用契約を結ばず、訓練や活動を通じて「工賃(報酬)」を得る形態です。A型に比べて働くことへのハードルが低く、就労スキルを身につけることを目的としています。また、次のような特徴があります。

  • 雇用契約がないため、労働基準法は適用されません。
  • 工賃の額は業務内容や事業所の収益状況によって異なります(全国平均は数千円~1万円程度)。
  • 働くことが難しい方やスキルアップを目指す方に向いています。
  • 作業内容は軽作業や簡単な手作業、農作業などが中心です。

就労移行支援、就労継続支援a型・b型の違い

就労移行支援、就労継続支援a型・b型の違いは次のようになっています。

就労移行支援就労継続支援A型就労継続支援B型
目的一般企業への就職働く場の提供働く場の提供
対象者18歳以上、65歳未満の方一般就労が難しい方一般就労が難しい方
利用期間最大2年制限なし制限なし
雇用契約なしありなし
収入なし賃金(最低賃金以上)工賃(事業所ごとに異なる)
支援内容就職準備、職場体験、就活支援、職業訓練、働くためのサポート職業訓練、働くためのサポート
就職後支援定着支援を提供必要に応じて提供なし(継続利用が前提のため)

就労移行支援の対象者と利用の条件

就労移行支援の利用にはいくつかの条件があります。ここでは、対象者や利用に必要な条件について詳しく解説します。

就労移行支援の対象者

就労移行支援の対象者は次の項目に当てはまる方です。

  • 18歳以上65歳未満の方(学生は除く)
  • 発達障がい、精神障がい、知的障がい、等の診断を受けた方
  • 一般企業などへ就職したいと考えている方や求職中の方

就労移行支援を利用する条件

就労移行支援の利用対象者の基本的な条件や、利用を開始するために準備すべきものを紹介します。

就労移行支援に障害手帳は必要?

就労移行支援の利用には、障害者手帳を持っていることが原則として求められます。

ただし、次の場合は障害者手帳がなくても利用いただけます。
医師の意見書・診断書をお住いの行政に提出し「障害福祉サービス受給者証」を取得した場合。

就労移行支援を利用できるケース

就労移行支援を利用することができるケースを3つ紹介します。

  • 障害者手帳をお持ちの場合
    • 利用には、障害者手帳を持っていることが原則として求められ障害者手帳を持っている場合は、その提示が必要です。
  • 医師の診断書や意見書をお持ちの場合
    • 医師の診断書や意見書は、利用者の障害の状態や支援の必要性を確認するために求められることがあります。特に、障害者手帳がない場合に必要とされることが多いです。
  • 生活保護受給者の場合
    • 生活保護を受けている場合でも、就労移行支援を利用することは可能です。この場合、担当の福祉事務所と相談し、必要な支援を受ける手続きを進めます。

就労移行支援の利用料金(費用)

就労移行支援の利用料金(費用)や工賃、交通費について解説します。

就労移行支援の利用料金(費用)について

就労移行支援の利用料金(費用)は、前年の世帯収入によって利用料金が発生する場合がありますが、自己負担なくご利用いただいている方が多いです。

世帯の収入状況負担額(上限)/月
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民非課税世帯(注1)0円
一般1市町村民非課税世帯(所得割16万(注1)未満)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除く(注3)
9300円
一般2上記以外37200円

(注1)3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。

(注2)収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。

(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「一般2」となります。

※その他要件により減免等があるため、お住まいの行政に確認してください。

就労移行支援では交通費が支給される?

就労移行支援事業所に通所するのにかかる交通費は、原則として自己負担となります。ただし、一部の自治体では交通費の助成してくれるところもあります。

また障害者手帳を取得している場合、交通費の割引を受けられる場合もあります。交通費の助成金など地域の自治体などにより違うため、詳細はお住まいの自治体へ確認してください。

就労移行支援を利用できる期間

就労移行支援は、原則として最大2年間利用することができます。この期間内に、利用者が就職を目指し必要なスキルや経験を身につけることを目的としています。

一部の例外として、特別な事情がある場合には延長が認められることがあります。

就労移行支援はなぜ最大2年までしか利用できない?

就労移行支援が最大2年までしか利用できない理由は、限られた資源の中で必要な支援を必要な人に提供する中で、利用者が支援を受け続けることに依存しないよう、2年間で就労を目指すことが期待されています。

就労移行支援の再利用はできる?

就労移行支援を利用して一度就職したが、再び離職した場合など、再利用が可能なケースがあります。
ただし再利用する場合も、過去の利用期間が考慮されるため、通算して2年を超える支援を受けることはできません。

また、再利用時には、利用計画を再度立て直すことが重要です。

就労移行支援の延長はできる?

次の条件を満たす場合に限り、就労移行支援の延長が認められることがあります。

  • 就職の見込みがある場合
    • 利用終了間際に就職がほぼ確実と判断される場合、数カ月の延長が認められることがあります。
  • 個別の特別な事情
    • 障害や病状の影響で、2年間の支援期間内で就職が難しい場合。

就労移行支援の利用までの手続きの流れ

次に、就労移行支援の利用までの流れを解説します。

就労移行支援を利用するまでの流れ

事業所を探す

まずは支援内容、通いやすさ、事業所の雰囲気など自分に合った就労移行支援事業所を探します。

お問い合わせ・見学予約

気になる事業所を見つけたら、まずは問い合わせをして見学予約を行います。
質問事項(支援内容、設備、実績など)を準備しておくとスムーズです。

見学・個別相談

約した日時に事業所を訪問し、見学を行います。
実際のトレーニング内容やスタッフの対応、利用者の様子や
自分の状況や希望を相談し、自分に合った支援がされそうかを確認すると良いです。

体験利用

見学後に興味を持った場合、ほとんどの事業所では「体験利用」が可能です。
詳細は後述します。

受給者証の申請

就労移行支援を利用するには「障害福祉サービス受給者証」が必要です。
発行までに数週間かかる場合があるため、早めの準備が重要です。

利用契約

受給者証が発行されたら、事業所と正式に利用契約を結びます。
利用開始日、支援内容、費用負担などを確認し、契約後、就労移行支援がスタートします。

就労移行支援の体験利用とは

就労移行支援の体験利用では、事業所を決める際に自分に合っているか確認するための機会です。また、体験利用とは主に次のような内容になります。

  • トレーニングの一部体験
    • 実際の訓練プログラムを部分的に体験できます(例:パソコンスキル講座、コミュニケーション練習など)。
  • 施設見学と利用説明
    • 施設の設備やスケジュールについての詳しい説明があります。
  • スタッフとの交流
    • 担当スタッフやサポート内容を直接知ることができます。

マンガで知る!就労移行支援

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