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【初心者向け】就労選択支援ってどんな制度?対象者や内容を紹介

更新日 2025/06/29
サムネ

「自分に合った仕事って何だろう?」
「働きたい気持ちはあるけれど、何から始めたらいいかわからない」
「今の働き方が、本当に自分に合っているのか不安…」

私たち就労移行支援事業所には、日々、働くことに関する様々な悩みや相談が寄せられます。一人ひとりが持つ個性や能力、そして「こうありたい」という願い。それらを活かせる仕事や働き方を見つけることは、簡単なことではありません。

そんな皆さんの「働きたい」という想いを、より確かな一歩へと繋げるための新しい制度が、2025年10月からスタートします。それが「就労選択支援」です。

この制度は、いわば「就職の羅針盤」を手に入れるためのサポートです。本格的な就職活動や訓練を始める前に、一度立ち止まって、専門の支援員と一緒に「自分自身」と「働くこと」についてじっくり考える時間を提供してくれます。

この記事では、これから始まる「就労選択支援」について、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

・就労選択支援って、そもそも何?
・誰が利用できるの?
・具体的にどんなことをするの?
・今までの就労移行支援や就労継続支援とはどう違うの?
・利用する上での注意点やメリットは?
この記事を読み終える頃には、新しい制度への理解が深まり、ご自身のキャリアを考える上での新たな選択肢が見つかるはずです。ぜひ最後までお付き合いください。

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MEWS職員

MEWSは2023年12月8日に開所し、就労を希望する方一人ひとりに合わせたカリキュラムを作成し、就職活動までサポートしています。

MEWSは2023年12月8日に開所し、就労を希望する方一人ひとりに合わせたカリキュラムを作成し、就職活動までサポートしています。

就労選択支援の基本を理解ししよう

就労選択支援とは何か

まずはこの新しい制度がどのようなものなのか、基本をみていきましょう!

就労選択支援とはなにか??

就労選択支援とは、障がいのある方が、自身の希望や能力、適性に合った仕事や働き方を主体的に選択できるように、専門的なアセスメント(評価)を通じて自己理解を深め、必要な情報を提供する支援のことです。

もう少しわかりやすくすると、ポイントは3つです。

「主体的に選択する」のが目的

就労選択支援は誰かに決められるのではなく、あなた自身が納得して進む道を選ぶための制度です。

「アセスメント」が核

就労選択支援では面談や短期間の作業体験を通じて、あなたの得意なこと、苦手なこと、働く上で必要な配慮などを客観的に整理します。

支援の中心は「自己理解」と「情報提供」

アセスメントの結果を分かりやすくフィードバックし、「自分はこういう特性があるのか」という気づきを促します。その上で、世の中にある様々な働き方や支援サービスの情報を提供し、選択肢を広げます。

つまり

これまでの就労支援サービスが、いわば「目的地(就職)へ向かうための乗り物(訓練や働く場)」だったとすれば、就労選択支援は「どの乗り物に乗るか、どのルートで行くかを決めるための地図とコンパス」の役割を担う、と言えるでしょう。

なぜ、この制度が必要なの??

この制度が作られた背景には、これまでの障がい者就労支援におけるいくつかの課題がありました。

ミスマッチの問題

「とりあえず」で就労継続支援B型事業所などを利用し始めたものの、「思っていた作業内容と違った」「もっと挑戦的な仕事がしたい」と感じ、早期に辞めてしまうケースがありました。

また、十分な準備がないまま一般就労し、職場で困難に直面してしまうことも少なくありませんでした。

選択肢の限定

利用者本人が、就労移行支援や就労継続支援A型・B型といったサービスの違いを十分に理解しないまま、身近にある事業所や勧められたサービスを利用する傾向がありました。

これにより、本人の可能性が狭められてしまう可能性があったのです。

本人主体の意思決定の難しさ

ご本人、ご家族、支援者それぞれの想いがある中で、ご本人の「本当はどうしたいのか」という声が、明確な形で整理され、尊重される機会が不足していました。

就労選択支援が生まれた経緯

これらの課題を解決し、「一人ひとりが自分の人生のハンドルを握り、納得のいくキャリアを歩んでほしい」という強い想いから、就労選択支援は生まれました。

利用開始の段階で質の高いアセスメントを行うことで、その後のミスマッチを防ぎ、より持続可能で満足度の高い就労を実現することを目指しています。

いつから始まる??

2022年10月に成立した改正障がい者総合支援法に基づき、2025年(令和7年)10月1日から全国一斉にスタートします。

まずは、就労継続支援B型を希望される方が対象となり、順次対象が増えていきます。

誰が、どこで受けられるのか ~対象者と実施主体~

対象者は誰か

次に、この支援を具体的に誰が、どこで受けることが出来るのかみていきましょう

対象者はだれ??

就労選択支援は、障がいのある方で、就労に関する意向がある方なら幅広く利用が想定されていますが、特に以下の方々が主な対象となります。

【原則として利用が必要になる方】

  • これから就労継続支援B型を利用したいと考えている方
  • これから就労継続支援A型を利用したいと考えている方(※2027年4月~)
  • 就労移行支援の標準利用期間(原則2年)を超えて、利用を更新したい方

これらの方々は、各サービスを利用する前に、原則として就労選択支援を受けていただくことになります。

「本当にこのサービスが今の自分に合っているか」を客観的に確認するステップを挟むことで、より適切なサービス利用に繋げる狙いがあります。

【希望すれば利用できる方】

上記以外の方でも、本人の希望があれば利用することが可能です。

例えば、このように、「働きたい」という漠然とした想いを具体的にしたいと願う、多くの方が対象となり得ます。

  • 特別支援学校の高等部に在学中で、卒業後の進路について考えたい生徒
  • 現在、就労継続支援B型を利用しているが、ステップアップして一般就労やA型を考えたい方
  • 一度就職したものの離職してしまい、次のキャリアをじっくり考えたい方
  • 長年ひきこもり状態にあり、社会参加への第一歩として自分の適性を知りたい方

どこが支援してくれるの??

就労選択支援は、どの事業所でも実施できるわけではありません。
利用者の人生の大きな選択に関わるため、一定の専門性と中立性を備えた法人が担うことになっています。

具体的には、以下のような実績を持つ法人が、都道府県から指定を受けて実施します。

  • 就労移行支援事業所や就労継続支援事業所で、過去3年間に3人以上を一般就労(週20時間以上の労働)に結びつけた実績がある法人
  • 障がいのある方の就労と生活を一体的に支援する「障がい者就業・生活支援センター」
  • その他、国や都道府県が認める、同等の支援能力と実績を持つ法人

【重要なポイント:中立性の確保】

利用者が客観的な視点で自分に合ったサービスを選べるように、原則として、利用者が現在利用している、あるいは利用を検討している就労支援サービス事業所と「同じ法人」が運営する就労選択支援は利用できません。

例えば、A法人が運営する就労継続支援B型事業所を利用したいと考えている場合、就労選択支援はA法人ではない、B法人やC法人が運営する事業所で受ける必要があります。これにより、特定のサービスに誘導されることなく、フラットな視点で自分に合った選択肢を検討することができます。

特別支援学校との連携は

卒業後の進路は、生徒本人にとっても、保護者にとっても大きな関心事です。
就労選択支援は、特別支援学校の高等部などに在学中の生徒も利用できます。

学校という慣れた環境の中にいるうちから、外部の専門機関である就労選択支援事業所と連携し、社会に出る準備を始められることは非常に大きなメリットです。

  • 早期からの自己理解
    • 自分の得意なことや好きなことを、作業体験やアセスメントを通じて発見できます。
  • リアルな職業情報の入手
    • 学校の先生とはまた違う、福祉の専門家から様々な働き方の情報を得られます。
  • スムーズな移行
    • 卒業後に利用する福祉サービスや就職先を、余裕をもって検討し、スムーズに次のステップへ移行できます。

教育と福祉が早期に連携することで、本人の可能性を最大限に引き出し、切れ目のない支援を実現します。

具体的に何をするの?~就労選択支援の具体的な流れ~

就労選択支援の流れ

では、実際に就労選択支援を利用する場合、どのようなステップで進んでいくのでしょうか。
申請から支援終了までの流れを、利用者の目線で見ていきましょう。

利用期間は、原則として1ヶ月です。状況に応じて、最長2ヶ月まで延長されることもあります。

【Step 1:相談・申請】

「就労選択支援を利用してみたい」と思ったら、まずはお住まいの市区町村の障がい福祉担当窓口や、計画相談を依頼している相談支援事業所に相談します。

「働くことについて、自分の適性や可能性を専門家と一緒に考えたい」と伝えましょう。

【Step 2:支給決定・事業所探し】

市区町村が利用の必要性を認めたら、「サービス等利用計画案」を作成し、利用が決定されます。

その後、市区町村から提供される情報をもとに、就労選択支援を実施している事業所の中から、利用したい事業所を選びます。

【Step 3:事業所との契約・面談】

利用したい事業所が決まったら、見学や面談に行き、支援内容の詳しい説明を受けます。納得できたら、事業所と利用契約を結びます。契約後、担当となる「就労選択支援員」との初回面談が行われます。

ここでは、あなたのこれまでの経験、興味関心、将来への希望や不安などをじっくりとヒアリングします。

【Step 4:アセスメント(作業体験など)の実施】

ここが就労選択支援の最も中心的な部分です。約2週間の期間を使って、様々な角度からアセスメントを行います。

  • 作業体験
    • 事業所が用意した複数の作業(例:事務作業、軽作業、PC入力、接客シミュレーションなど)を体験します。これにより、「集中力が続く作業は何か」「手先の器用さはどうか」「チームでの作業と個人作業のどちらが向いているか」といった、客観的な適性を把握します。※事業所により内容が異なります。
  • 講義参加
    • 事業所にあるカリキュラムの参加をします。訓練を通じて、本人の意欲や就労への可能性を見出していきます。
  • 対話(面談)
    • 作業の感想を支援員と振り返ったり、日々の対話を通じて、あなたの価値観(何を大切にして働きたいか)や興味の方向性を探っていきます。
  • 各種ツールの活用
    • 必要に応じて、職業適性検査などのツールを使い、自己理解を多角的に深めることもあります。

重要なのは、これは「テスト」ではないということです。
うまくできることだけでなく、苦手なことや、どんなサポートがあればできそうかを明らかにすることが目的です。

【Step 5:結果の整理・フィードバック】

アセスメント期間が終わると、就労選択支援員が体験や面談で得られた情報を整理し、「アセスメント結果」としてまとめます。
そして、あなたやご家族に対して、その結果を分かりやすく説明してくれます(フィードバック面談)。

「〇〇さんは、コツコツと正確に進める作業で高い集中力を発揮されていましたね。一方で、複数の指示が同時に出ると混乱しやすい傾向があるようです。なので、作業指示は一つずつ具体的にしてもらう環境が合っているかもしれません」

このように、客観的な事実に基づいた強み(ストレングス)と、働く上での課題や必要な配慮をセットで伝えてくれます。
これにより、自分では気づかなかった新たな自分を発見できるかもしれません。

【Step 6:関係機関との連携・情報収集】

アセスメント結果をもとに、ハローワークの専門援助部門や、障がい者就業・生活支援センター、そして私たちのような就労移行支援事業所など、地域の様々な支援機関と連携します。

あなたの希望や適性に合いそうな企業の情報や、利用可能な福祉サービスについて、具体的な情報を集めていきます。

【Step 7:今後の方向性を自分で決める】

全てのプロセスを経て、最終的に「これからどうしたいか」をあなた自身が決定します。
支援員は、あなたの決定をサポートするための助言や情報提供はしますが、決して「こうしなさい」と強制することはありません。

「自分の強みを活かして、一般就労を目指したい。まずは就労移行支援でスキルアップしよう」
「アセスメントを受けて、自分のペースで働けるB型事業所が合っていると確信できた」
「もう少し時間をかけて考えたいので、まずは地域の活動に参加してみよう」

どんな結論であれ、あなたが考え、納得して下した決断が尊重されます。
この「自己決定」のプロセスこそが、就労選択支援のゴールです。

他の制度とはどう違うの?~就労移行支援・就労継続支援との比較~

before→after

【Before:これまでの流れ】

働きたいけど、何が向いているか分からないまま、就労移行支援の利用を開始。
訓練を進める中で、「実は事務職より、体を動かす仕事の方が好きかも…」と気づく。

目標設定をやり直し。訓練内容によっては、時間がかかってしまうことも。

【After:就労選択支援を活用した流れ】

まず就労選択支援を利用し、「自分は事務職の適性が高く、コミュニケーションスキルを伸ばす必要がある」という自己理解を深める。

その上で、「事務職を目指し、ビジネスマナーとPCスキルを重点的に学びたい」という明確な目標を持って就労移行支援の利用を開始。
目的意識が高いため、訓練へのモチベーションも高く、効率的にスキルを習得。
ミスマッチの少ない、納得のいく就職へ!
このように、就労選択支援は、就労移行支援の効果を最大化するための、いわば「最高の準備運動」と言えます。

自分の特性や目標がクリアになっているため、就労移行支援という2年間の貴重な時間を、より有意義に活用することができるのです。

制度のメリットと注意点

利用者が得られる3つの大きなメリット

新しい制度を利用するにあたって、良い点だけでなく、考えられる課題や注意点も知っておくことが大切です。

利用者が得られる3つの大きなメリット

客観的な自己理解が深まる

自分一人で「得意なこと」を考えるのは意外と難しいものです。支援員の客観的な視点や、作業体験という具体的な事実を通して、「自分でも知らなかった強み」や「課題を乗り越えるための具体的な工夫」を発見できます。

これは、就職活動の自己PRや、就職後のセルフケアにも繋がる大きな財産となります。

就職後のミスマッチを大幅に減らせる

「こんなはずじゃなかった…」という就職後のミスマッチは、本人にとっても企業にとっても辛いものです。

事前に自分の特性や必要な配慮を明確にしておくことで、自分に合った職場環境を選びやすくなり、安定して長く働き続ける可能性が高まります。

視野が広がり、選択肢が増える

「自分にはこの仕事しかない」と思い込んでいたけれど、アセスメントを通じて「意外とこんな仕事も向いているかもしれない」と気づくことがあります。

また、支援員から様々な働き方や企業の情報を得ることで、自分のキャリアに対する視野が格段に広がります。

利用する上での課題と注意点

短期間で全てを判断する難しさ

利用期間は原則1ヶ月と短いため、その時の体調や気分によっては、本来の力を発揮できないこともあるかもしれません。

アセスメントの結果が全てではない、ということは心に留めておきましょう。あくまで、自分を知るための一つの「材料」と捉えることが大切です。

アセスメント結果と希望が違う場合

「自分はAという仕事がしたいけれど、アセスメントではBという仕事の方が向いていると出た」ということもあるかもしれません。そんな時は、支援員とじっくり話し合いましょう。

なぜその結果が出たのか、自分の希望を叶えるためにはどんな工夫や努力が必要なのかを一緒に考える良い機会になります。
最終的な決定権は、常にあなた自身にあります。

形式的なアセスメントにならないために

この制度が有効に機能するかは、担当する就労選択支援員の専門性や、事業所の質にかかっています。

利用者自身も「お任せ」にするのではなく、「自分を知りたい」という主体的な気持ちでアセスメントに臨み、感じたことや疑問を積極的に支援員に伝える姿勢が大切です。

就労選択支援のまとめ

メッセージ

今回は、2025年10月から始まる新しい制度「就労選択支援」について、解説してきました。

就労選択支援は、障がいのある方一人ひとりが、自分の人生の主役として、納得のいくキャリアを選択するための羅針盤です。

本格的な航海(就職活動や就労)に出る前に、一度港で立ち止まり、専門の航海士(支援員)と一緒に、自分の船(能力・特性)を点検し、海図(キャリアプラン)を広げて、進むべき方角をじっくりと考える。そんな価値ある時間を提供してくれる制度です。

私たち就労移行支援事業所は、この新しい制度のスタートを心から歓迎しています。
なぜなら、明確な目標と深い自己理解を持って私たちの事業所に来てくださる方が増えることで、私たちが提供する訓練や支援が、より一層その方の力になると信じているからです。

「働きたい」という想いは、とても尊いものです。
その想いを、不安や迷いの中で消してしまうのではなく、確かな自信と希望に変えていく。就労選択支援は、そのための力強い味方となってくれるでしょう。

もし、あなたが、

自分の可能性を試してみたい
働くことへの一歩を、慎重に踏み出したい
自分に本当に合った場所で輝きたい
そう願うなら、ぜひ「就労選択支援」という選択肢を覚えておいてください。

そして、就労選択支援を経て、「一般企業で働くためのスキルを身につけたい」という目標が見つかった時には、ぜひ私たち就労移行支援事業所のドアを叩いてください。
あなたの自己理解という土台の上に、就職という夢を実現するためのスキルと自信を、一緒に築き上げていきたいと思っています。

この記事が、あなたの「働きたい」を応援する、はじめの一歩となれば幸いです。
ご不明な点やご相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせください。

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