コラム記事
就職、転職活動で困っていませんか?大人のASDのためのキャリア戦略
執筆者
MEWS職員
MEWSは2023年12月8日に開所し、就労を希望する方一人ひとりに合わせたカリキュラムを作成し、就職活動までサポートしています。
MEWSは2023年12月8日に開所し、就労を希望する方一人ひとりに合わせたカリキュラムを作成し、就職活動までサポートしています。
「就職活動になかなかうまくいかない」「今の仕事が辛くて、転職を考えているけど自分に合う仕事が見つかるか不安」
そんな悩みを抱えている方はいませんか?
近年、発達障害の一つであるASD(自閉スペクトラム症)への理解が少しずつ広まっています。ASDは、コミュニケーションや対人関係が苦手、特定の分野への強いこだわりなど、特有の特性を持つ発達障害です。
これらの特性は、就職や転職活動において、困難を感じる場面につながることもあります。しかし、ASDの特性を理解し、適切な戦略を立てることで、自分らしく輝ける働き方を見つけることは十分可能です。
本記事では、ASDの方々が就職・転職活動を成功させるためのヒントや、自分らしく働ける環境を見つけるための方法を具体的に解説していきます。
\相談は小田原の『就労移行支援事業所MEWS』へ/
ASDとは?自閉スペクトラム症の基本知識
ASDの特性は人それぞれ異なり、軽度な場合もあれば、日常生活に支障が出るほど重度な場合もあります。 代表的な特性としては、以下のようなものがあげられます。
- 社会性
- 対人関係の構築や維持が苦手、場の空気を読むのが難しい、相手の気持ちを理解することが難しいなど。
- コミュニケーション
- 言葉の発達の遅れ、比喩表現や sarcasm の理解が難しい、一方的な会話になりやすいなど。
- 行動や興味・関心
- 特定の物事への強いこだわり、決まった手順やルーティンを好む、感覚過敏など。
ASDとADHDの違いを理解する
ASDと混同されやすい発達障害に、ADHD(注意欠如・多動症)があります。
特性 | ASD | ADHD |
---|---|---|
社会生 | 対人関係の構築や維持が苦手 | 相手の気持ちを考えず発言ししまうことが多い |
コミュニケーション | 言葉の発達の遅れ、一方的な会話になりやすい | 話が止まらない、割り込みが多い |
行動や興味・関心 | 特定の物事へのこだわり | 集中力が続かない、落ち着きがない |
大人のASDにおける発達障害の症状
ASDは、幼少期に診断されることが多いですが、大人になってから診断されるケースも少なくありません。 大人のASDによく見られる症状は以下の通りです。
- 仕事や人間関係がうまくいかない
- うつ病や不安障害などの二次障害
- 感覚過敏による疲れやすさ
- 自分自身への違和感や生きづらさ
ASDの診断テストとその重要性
診断テストの種類と選び方
ASDの診断は、専門医による問診や行動観察、発達検査などを通して行われます。 診断テストには、以下のようなものがあります。
- 自閉症スペクトラム検査(ADI-R、ADOS-2など)
- 専門家が子どもの行動を観察し、保護者からの聞き取り調査を行うことで、ASDの有無を診断する検査。
- 発達障害者支援センターなどで行われる発達検査
- 知能検査やコミュニケーション能力、社会性などを総合的に評価する検査。
日常生活でのセルフチェックリスト
「自分はASDかもしれない」と感じたら、セルフチェックリストを試してみましょう。
【セルフチェックリストの例】
- 会話のキャッチボールが苦手だと感じる
- 人の気持ちが理解できないと言われることがある
- 特定の音や光に過敏に反応してしまう
- 決まった手順で物事を進めたい気持ちが強い
- スケジュール変更や予定外の出来事に対応するのが苦手
ただし、セルフチェックリストはあくまでも目安であり、自己判断は禁物です。
診断を受けるメリット
ASDと診断されることにより、前向きに捉えることが出来る部分もあります。
- 自分自身の特性への理解が深まる
- なぜ生きづらさを感じてきたのか、その原因が明らかになることで、自分自身を客観的に見つめ、自己肯定感を高めることにつながります。
- 適切な支援を受けやすくなる
- 障害者手帳の取得や就労移行支援事業所などの利用を通じて、就職活動や職場定着のためのサポートを受けることができます。
- 周囲の理解と協力を得やすくなる
- 会社や家族に自分の特性を伝えることで、誤解を防ぎ、働きやすい環境を整えてもらうことができます。
ASDの特性:大人の行動とコミュニケーション
困難な対人関係とその解決法
ASDの特性として、対人関係の難しさは多くの人が抱える課題です。
【具体的な行動例と解決策】
- 問題: 会話の中で、相手の意図を汲み取ることができず、的外れな返答をしてしまう。
- 解決策: 相手の言葉だけでなく、表情や声のトーン、周りの状況なども考慮しながら、コミュニケーションを取るように心がける。
- 問題: 相手の気持ちを察することが苦手で、場の空気を悪くしてしまうことがある。
- 解決策: 周りの人の表情や雰囲気をよく観察し、周りの人がどんな反応をしているかを意識する。
- 問題: グループワークや会議など、複数人でのコミュニケーションが苦手。
- 解決策: 事前に議題や自分の役割を明確にしておく。発言する際には、簡潔で分かりやすい言葉を使うよう心がける。
苦手なコミュニケーションの克服方法
ASDの方にとって、円滑なコミュニケーションは大きな課題です。
【コミュニケーションを円滑にするためのポイント】
- 相手の目を見て話す
- 相手の目を見て話すことは、相手に興味や関心を示す上で重要です。
- 相槌を打つ
- うなずいたり、「はい」「ええ」などの相槌を打つことで、相手に話を聞いてもらえている安心感を与えます。
- 質問をする
- 相手の話を理解するために、積極的に質問をすることは有効です。
- 自分の気持ちを伝える
- 自分の気持ちを伝える際には、「私は~と思います」「~と感じる」など、主語を明確にしましょう。
職場での特性に対する理解と対応
ASDの人が働きやすい環境を作るためには、職場全体の理解と協力が不可欠です。
【職場での配慮例】
- 明確な指示
- 仕事を依頼する際は、具体的な内容、期日、必要な情報を明確に伝えましょう。
- 作業環境の調整
- 音や光に過敏な場合は、イヤーマフや遮光眼鏡の使用、静かな場所で作業できる環境などを配慮しましょう。
- コミュニケーション方法の工夫
- メールやチャットツールなどを活用することで、スムーズなコミュニケーションを図ることができます。
大人のASDにおける職業適性
職域の選び方と重要性
ASDの特性を活かせる仕事はたくさんあります。
【ASDの特性に適した仕事例】
- IT関連
- プログラミングやシステムエンジニアなど、論理的思考力や集中力を活かせる仕事
- 研究開発
- 特定の分野への深い知識や探求心を活かせる仕事 事務職: ルーティンワークや正確性を求められる仕事
- クリエイティブ職
- デザイナーやライターなど、独自の感性を活かせる仕事
特性に適した職場環境とは?
ASDの人が働きやすい職場環境には、以下の要素が挙げられます。
- 明確なルールや指示
- 仕事内容や評価基準などが明確である
- 落ち着いた環境
- 音や光などの刺激が少ない環境
- 理解のある上司や同僚
- ASDの特性に理解があり、サポートしてくれる存在がいる
職場での問題解決の方法
職場では、様々な問題が発生する可能性があります。
【問題解決のためにできること】
- 一人で抱え込まず、相談する
- 困ったことがあったら、上司や同僚、産業医などに相談してみましょう。
- 自分の特性を理解してもらう
- 職場の人にASDの特性を理解してもらい、必要な配慮をしてもらうことが大切です。
- 転職も視野に入れる
- どうしても今の職場で働き続けることが難しい場合は、転職も視野に入れましょう。
ASDの治療法と支援方法
医療機関での治療選択肢
ASDの治療法には、薬物療法と非薬物療法があります。
- 薬物療法
- 対人関係の改善や不安の軽減などを目的とした薬物療法が行われることがあります。
- 非薬物療法
- 行動療法や認知行動療法など、心理療法を通して、社会性やコミュニケーション能力を高めることを目指します。
過敏な感覚に対する対応策
ASDの方の中には、音や光、触覚などに過敏な反応を示す「感覚過敏」を持つ方がいます。
【感覚過敏への対応策】
- イヤーマフや耳栓の使用
- 騒音から耳を守る
- サングラスや遮光眼鏡の使用
- 光の刺激を軽減する
- 肌触りの良い衣類の着用
- 肌への刺激を軽減する
特性を活かした治療法の一例
ASDの特性を活かした治療法として、SST(Social Skills Training:ソーシャルスキルトレーニング)や、アスペルガー専門の就労移行支援事業所などが挙げられます。
- SST
- ロールプレイングなどを通して、コミュニケーション能力や社会性を高める訓練。
- アスペルガー専門の就労移行支援事業所
- 就職活動のサポートや職場定着のための訓練などを受けることができます。
ASDに対する社会的理解を深める
周囲の理解を得るための方法
ASDに対する理解を深めてもらうためには、積極的に情報発信することが大切です。
- カミングアウト
- 職場や学校で、自分の特性を伝えることで、誤解を防ぎ、サポートを受けやすくなります。
- 啓発活動
- ASDに関する書籍やウェブサイトなどを紹介することで、正しい知識を広めることができます。
ASDについて知っておくべきこと
ASDは、個性の一つです。
- ASDは病気ではない
- ASDは発達障害であり、適切な支援や環境調整によって、社会参加し、自分らしく生きていくことができます。
- 一人ひとり違う
- ASDの特性は人それぞれ異なり、得意な分野や苦手な分野も違います。
社会的な障害の克服に向けて
ASDの方が生きやすい社会を作るためには、社会全体で、障害への理解を深めていく必要があります。
ASDの自助とセルフケア
生活の中でのストレス軽減法
ストレスをため込まないためには、自分に合ったストレス解消法を見つけることが重要です。
【ストレス軽減法の例】
- 趣味を楽しむ
- 音楽鑑賞、読書、散歩など、自分がリラックスできる趣味を見つけましょう。
- 適度な運動
- 軽い運動は、ストレス解消効果だけでなく、睡眠の質向上にもつながります。
こころの健康を保つために
ASDの人は、うつ病や不安障害などの精神疾患を併発しやすいと言われています。
【心の健康を保つためのポイント】
- 規則正しい生活
- 睡眠時間や食事の時間などを規則正しくすることで、体内時計を整え、心身の安定につながります。
- バランスの取れた食事
- 栄養バランスの取れた食事を摂ることは、心身の健康を維持するために重要です。
- 相談できる相手を見つける
- 家族や友人、専門機関など、信頼できる相談相手を見つけ、一人で抱え込まないようにしましょう。
自己理解を深めるための質問
自分自身と向き合い、自己理解を深めることは、より良い人生を送るために大切です。
【自己理解を深めるための質問例】
- 自分の強みと弱みは何ですか?
- 何をしている時が楽しいですか?
- どんな時にストレスを感じますか?
- 将来、どんな自分になりたいですか?
ASDの発達に伴う不安とその対処法
不安感の原因とは?
ASDの方が抱える不安感には、以下のような原因が考えられます。
- 将来への不安
- 就職活動や人間関係、社会生活への不安
- 変化への対応
- スケジュール変更や予定外の出来事への対応が難しい
- 感覚過敏
- 音や光、触覚などへの過敏さからくるストレス
不安を軽減するための方法
不安を軽減するためには、以下の方法を試してみましょう。
- リラクゼーション
- 深呼吸や瞑想、ヨガなどを通して、心身のリラックスを図りましょう。
- マインドフルネス
- 「今」に意識を集中することで、雑念を払い、心を落ち着かせることができます。
- 認知行動療法
- 認知の歪みを修正し、ネガティブな思考パターンを変えることで、不安を軽減します。
日常生活で実践できるメンタルケア
- 自分と向き合う時間を作る
- 日記を書いたり、瞑想したり、自分と向き合う時間を取りましょう。
- 好きなことに没頭する
- 好きなことに集中することで、不安やストレスを忘れられます。
- 自然と触れ合う
- 自然の中に身を置くことで、心が安らぎます。
大人のASDのまとめ
ASDの特性を理解し、適切な戦略を立てることで、就職・転職活動の成功率を高め、自分らしく輝ける働き方を実現できるはずです。
一人で悩まず、専門機関や支援団体、周りの人に相談しながら、自分自身のペースで、一歩ずつ進んでいきましょう。