「ADHD」仕事や私生活の「忘れっぽさ」の対策と改善方法
ADHD(注意欠如・多動症)は、注意力の持続が難しい、衝動的な行動、落ち着きのなさといった特徴があり、特に「忘れっぽさ」に悩む人が多いです。
例えば、会議の予定を忘れる、約束の時間をすっぽかす、鍵やスマホを何度もなくすなど、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。
厚生労働省によると、成人のADHDの有病率は2〜3%とされており、決して珍しいものではありません。
この「忘れっぽさ」は本人の努力不足ではなく、脳の働きによるもの。だからこそ、正しい理解と対策が必要です。
\相談は小田原の『就労移行支援事業所MEWS』へ/

執筆者
MEWS職員
MEWSは2023年12月8日に開所し、就労を希望する方一人ひとりに合わせたカリキュラムを作成し、就職活動までサポートしています。
MEWSは2023年12月8日に開所し、就労を希望する方一人ひとりに合わせたカリキュラムを作成し、就職活動までサポートしています。
ADHDによる忘れっぽさの具体例
仕事での忘れっぽさ
- 会議やアポイントを忘れる
- メール返信を後回しにして忘れる
- 提出期限を忘れる
- 必要な資料や道具を持ってくるのを忘れる
- 書類を保存せず閉じてしまいデータが消える
- 朝礼や進捗会議で話す内容を失念する
アドバイス:仕事でのミスを減らすには?
- タスクは小さく分解して「見える化」
- 1日の予定は朝イチに見直し、昼・夕方にもチェック
- 話すべきこと・やるべきことは「メモしておく」が鉄則
- 大事なファイルは「自動保存」をONにし、定期的にバックアップ
- 朝礼前に内容を確認する時間をアラームで設定しておく
私生活での忘れっぽさ
- 鍵や財布、スマホを置き忘れる
- 買い物リストを忘れて買い忘れが頻発
- ゴミ出しの日を忘れる
- 薬の飲み忘れ
人間関係への影響
- 約束を守れないことで信頼を失う
- LINEやメールの返信を忘れてしまう
- 誕生日や記念日を忘れてトラブルになる
ADHDの忘れっぽさの原因とは?
ワーキングメモリの弱さ
ADHDの人は「ワーキングメモリ(作業記憶)」が弱いことが多いです。
これは情報を一時的に保持して操作する力のことで、これが弱いと、数分前に聞いたことすら忘れてしまうことがあります。
注意の切り替えと持続の困難さ
複数のことを同時にこなそうとすると注意が分散しやすく、重要な情報が抜け落ちてしまいます。
また、一つのことに集中するのが難しく、途中で気が逸れてしまい、タスクが完了しないことも。
根本的な対処法
- 1つの作業に集中できる環境を整える(静かな空間、時間制限など)
- 「ポモドーロ・テクニック」(25分集中→5分休憩)などを試してみる
- 自分が「脱線しやすいタイミング」を記録して、注意の習慣化を図る
- 一度にやることを減らし、1タスク1完結を意識する
時間管理能力の欠如
ADHDでは「時間の感覚」が掴みにくいと言われています。
これにより、「まだ時間がある」と思っていたらすでに締切が過ぎていた、というようなことが起こりがちです。
根本的な対処法
- アナログ時計を使って「時間の流れ」を視覚的に把握
- タイマーやアラームを複数回かける
- スケジュールを細かく区切り、「開始時間」と「終了時間」を常に意識する
- 「かかる時間を予測→実際に計測→ズレを修正」のサイクルを回す
ADHDの忘れっぽさに対する具体的な対策
メモとリマインダーを徹底活用
スマホのリマインダーやToDoリストアプリを活用することで、「うっかり忘れ」を防ぐことができます。
GoogleカレンダーやTimeTreeなどの共有カレンダーもおすすめです。
- 「やること」はすぐメモ。頭で覚えない
- リマインダーは時間+場所で設定する(例:帰宅したら薬を飲む)
- 繰り返しリマインダーで定期的な習慣をサポート
実際にMEWSで勧めている活用法「とりあえずメモ」と「清書メモ」
話を聞きながらメモを取るとき、うまく書けなくて後で見返したときに「これ何のことだっけ…?」となること、ありませんか?
そんなときにおすすめなのが、「とりあえずメモ」と「清書メモ」を使い分ける方法です。
とりあえずメモ:スピード重視で大事なことは目立たせる
話を聞きながら取る「とりあえずメモ」は、まず何でもいいので書き残すことが大事です。
全部をきれいに書こうとせず、とにかく聞き逃さないことを優先。
ポイントは、大事そうな言葉や日時などを「★マーク」や「赤ペン」などで目立たせておくこと!
あとで清書メモするときに重要になります。
清書メモ:あとで整理して、頭の中にも定着
話が終わったら、時間が空かないうちに「清書メモ」を作ります。
「とりあえずメモ」を見ながら、内容を自分の言葉で整理し直すことで、頭に定着します。
きれいにまとめると見やすくなり、見返しやすいメモになります。
会議などの予定のメモはリマインダーもセット
もしメモの中に「〇日〇時に会議」などの予定が出てきたら、その場でスマホなどにリマインダーを設定しておくのもポイント。
忘れてしまっても、アラームが教えてくれるので安心です。
こんなふうに、「とりあえず書く→あとで整理→リマインダーでフォロー」の流れを作ることで、情報をしっかりキャッチして、抜け漏れを減らせます。
毎日のメモに、ぜひ取り入れてみると良いかもしれません。
ルーチンを生活に取り入れる
日々の行動をルーチン化することで、意識しなくても行動できるようになります。
- 起床後〜出勤前の流れを決めておく
- 服や持ち物を前日のうちに準備
- 出勤・帰宅後のルーチンを固定化(例:カギは必ず玄関のフックに)
仕事のタスク管理術
- タスクを細分化して「小さな達成」を積み上げる
- 進捗管理にTrelloやNotionなどのツールを活用
- その場でやる・スケジュールに組む・断る、の3択ルール
人間関係での工夫
- 返信は「今すぐ」が基本。あとで返そうは忘れる原因
- 約束はカレンダー共有+アラームをセット
- 忘れたときは正直に謝る+再発防止策も伝えると信頼回復に繋がる
就職を検討中の方は就労移行支援という選択肢も
忘れっぽさへの対応や就職の準備を一人で抱えるのが大変な場合は、「就労移行支援」という福祉サービスの活用も検討できます。
これは、障がいや特性に応じた仕事のスキルや生活習慣のトレーニングを行い、就職をサポートしてくれるサービスです。
特にADHDの方には、以下のような支援が有効です:
- タスク管理や時間の使い方の訓練
- メモやスケジュールアプリの使い方サポート
- 注意の切り替え練習や集中力アップのプログラム
- 実際の仕事を模した作業体験
また、就職後の「定着支援」も行われており、職場での困りごとを一緒に解決していく体制もあります。
「仕事で忘れてばかりで続かない…」という悩みにも、一人で抱え込まずプロの支援が受けられる環境があります。
根本的な改善に向けたアプローチ
脳の可塑性に注目する
脳は鍛えることで機能が改善する「可塑性」があると言われています。
忘れっぽさの原因の一つであるワーキングメモリや注意力も、日々のトレーニングで向上が期待できます。
具体的なトレーニング方法
- Nバック課題や記憶トレーニングアプリの活用
- 読書や日記などで情報の保持・要約力を鍛える
- 楽器演奏や語学学習など、脳を広く使う趣味を持つ
運動・睡眠・栄養の見直し
基礎的な生活習慣も、脳機能に大きく影響します。
- 有酸素運動はワーキングメモリや注意力向上に効果的
- 質の良い睡眠で記憶の定着を促進
- 鉄分やオメガ3脂肪酸など、脳に良い栄養素を意識する
医療や支援機関の活用
診断と治療の重要性
ADHDが原因で生活や仕事に支障を感じているなら、まずは専門医への相談をおすすめします。診断がつくことで、支援や配慮を受けやすくなります。
薬物療法とその効果
日本では、コンサータやストラテラ、インチュニブなどの薬がADHDに対して処方されています。
これらは注意力や衝動性の改善に一定の効果があるとされています。
カウンセリング・認知行動療法
心理的アプローチとして、カウンセリングや認知行動療法(CBT)が有効です。
忘れっぽさや不注意による「自分はダメだ」という思い込みを和らげ、自信を取り戻す支援になります。
ADHDの忘れっぽさまとめ
ADHDによる忘れっぽさは、本人の性格や怠惰ではなく、脳の特性に起因するものです。
自己理解を深め、環境を整え、必要に応じて支援を受けることで、仕事や私生活におけるミスを減らすことができます。
さらに、ワーキングメモリや注意力の基礎を強化することは、根本的な改善にもつながります。
そして、就労移行支援などの外部サポートを活用することで、より実践的・持続的な支援が受けられる可能性があります。
完璧を目指すのではなく、「ちょっと楽になる」工夫を積み重ねていくことが大切です。